12/07/2007

ウェブ進化論

梅田望夫著、ウェブ進化論

あるとき、「グリーンカード(米国永住権)の抽選に当たったので、渡米準備中」という28歳の男性と、メールでやりとりしていた。彼が、自分の英語力、自分の専門能力から鑑みて、渡米したあとに、特に就職面で、どんなことが自分に待ち受けているのかについて、私の意見を求めてきたからだ。

日本人が米国で働く場合には、米国の大学や大学院に留学したり、外資系企業で働いて米国転籍したり、日本企業で米国駐在したりしながら、都度、誰かにスポンサーしてもらってビザを得て、一歩一歩経験を積みながら、機が熟したところでグリーンカードを取得するというのが普通だ。その間、留学でも就職でも、必ず「誰かに選ばれる」というプロセスが介在してビザをスポンサーされる。だから、「選ばれる」自分の価値を確認しながら、一歩一歩着実に歩んでいける。

しかし「抽選でグリーンカード」というのは、そのプロセスを一気にすっ飛ばすわけである。米国で働きたい人にとって、グリーンカード取得は素晴らしい幸運である。でも日本の大学を卒業して日本でしか仕事経験のない28歳が、抽選でグリーンカードを取得して渡米すれば、ある意味、徒手空拳の就職活動が待っている。就職時に「グリーンカードを持っている」ことは、ビザをスポンサーしてもらう場合よりは条件がうんといいが、それ以上でも以下でもなく、とても厳しいことが待っているはずだ。

(中略)

私が渡米したのが34歳のとき。このメールを書いたのが44歳のとき。「44歳の私」が「34歳だった私」から相談を受けたら、どんな回答をしただろうかと悩んでしまったのである。ひょっとして「お前がやろうとしていることは、危なっかしくて見ていられない」と答えたのではあるまいかと。

(中略)

たしかに「44歳の私」は、10年前「34歳だった私」に比べて、圧倒的にモノが見えている。いろいろな経験を積んだ。たくさんの人を見てきた。でもモノが見えている分だけ、新しいこと、未経験なことについて、ネガティブに判断するようになってはいないだろうか。これを「老い」と言うのではないのか。

放置すれば人は、年を取るにつれてどんどん保守的になっていく。私も、意識的に「若さ」と「勢い」を取りもどさなければいけないなぁ。

オンラインでウェブ進化論をダウンロードする -> 「ウェブ進化論 ―本当の大変化はこれから始まる/ 梅田望夫」

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